コンタクトレンズのこんな活用法
私たちの生活にほんとうに必要な「眼のよさ」は、視力だけではありません。
心理的に自分が動揺してしまったとき、眼の動きで心をコントロールする方法を紹介します。目の前の現実に怒りを感じて、抑えられないときのトレーニング法ですが、I君は見事なほど顔のぶれがありません。
顔や身体の力が抜けそして何より、ひとつひとつの数字を見つめる眼差しが力強く、モノの表面だけでなく、その内部まで射抜くような眼光が印象的でした。素早く動くけれど、軽々しく跳ねてはいない。
武芸を磨く剣士のような趣きを感じさせます。振り子打法がI選手のトレードマークですが、振り子打法を内から支えているのは、その確かな眼の動き、スムーズな眼球運動なのです。
変化球はバットをかいくぐるためだけでなく、打者の体勢を崩し、打撃フォームを骨抜きにする目的があります。ところが、I選手は眼だけでボールを追えるため、体勢を崩す度合いが圧倒的に少ないのです。
重心が投手方向に大きく移動するのが振り子打法の特徴ですが、一見体勢が崩れている場合も、ボールを見る眼差しがしっかり安定し、顔がぶれていないので体勢はスッと保たれています。だからI選手は安定して、しかも力強くボールを弾き返せるのです。
ビジョントレーニングでは、中央をくり抜いた透明なアクリル板製の「眼力ボード」で眼球の動きをチェックします。上下、左右、斜めに番号がふってあるので、どの方向の動きがスムーズでどの方向の動きが苦手か簡単にわかります。
上下、左右、斜めの動き。眼の傾向が時として変わるのは現実的な視点で考え、行動する傾向が強くなったことを表しています。
上下、左右、斜めと順に数字を追って視線を移動させる。顔を動かさずにスムーズにできたら、眼球の動きが良いといえる。
眼といっしょに大きく顔が動く人は、眼球の動きがいいとは言えません。眼球の動きだけでものを追えないから、顔を動かしてしまうわけです。
スポーツ選手なら、眼といっしょに顔が動けば身体の軸もぶれやすくなり、俊敏さも鈍ります。しかしトレーニングを積めば、この動きは改善できます。
体をふくらませ、屈折力を高めるのです。人間は1つの像として捉えます。
上下左右、どの方向の眼球運動もスムーズにするときにチェックするポイントは、次の点です。眼だけを動かして数字を追えているか(顔がいっしょに動くのはよくありません)。方向によって、眼の動き、顔の動きに差がないか。
ひとつひとつの数字を見る眼差しに力強さがあるかです。I選手の趣味が「マイカーの洗車」というのはよく知られています。
あるとき、記者会見で、いま何が欲しいか、と訊かれて「洗車セット」と答えたエピソードは有名です。I選手はオフの日に、クルマだけでなくグラブやスパイクを丁寧に磨くことも習慣にしています。
これは、ものを大切にする心がけの良さ、道具のチェックを励行するプロの心得と理解されるでしょうが、もうひとつ、眼とパフォーマンス(プレーぶり)の大切な関係も象徴しています。
人は、眼の前の何かを無意識に扱っていると、ごく自然に自分の世界に入り込めます。それができるI選手ですが、厳密に言うと、ある方向だけ、顔がぶれやすくなります。
左斜め上から右斜め下に眼球を動かす場合です。もしI選手が右打者なら、右投手の投じる大きなカーブや鋭いスライダーに身体が崩れやすいかもしれません。
ところが、右投げでありながら左打者であるI選手は、この弱点がハンディキャップになる局面が打席ではほとんどありません。カーブも実際には自分に向かって飛んできて縦に落ちるイメージですから、それほど苦になりません。
この弱点が、早い時期から左打者に転向したためについた癖なのか、元来持っていた性質なのかはわかりませんが、いまI選手が右でなく左打席に立っているのは、眼の動きから見ても大正解だと言えるでしょう。スランプになるとIは「ボールの右側を見る」ある雑誌のインタビューに答えて、「僕はスランプになったら、投手が投げてくるボールの右側を見るように心がけている」とI選手が言ったのを読んだことがあります。
野球をよく知る友人の解説によれば、左打者がボールの右側を見るとたしかに身体の右サイドが締まる感じになる、早く身体が開くのを抑える働きにつながる効果があるようです。眼の使い方で身体の動きをコントロールする、それをはっきりと認識し実践しているI選手はさすがというほかありません。
細心の注意を要する難しい作業ではいけませんが、スパイクを磨くとか、グラブの汚れをとるなど、半ば無意識でできる作業なら、動作をしながら明日の試合を考えたり、バッテイングのイメージを広げたりできるのです。だからI選手は、洗車やスパイク磨きが好きなのかもしれません。
そして、これは翌日の試合に向けたメンタルリハーサル、リラクゼーションという以上の積極的な準備になっているのです。でも私は「ボールの右側を見る」ことが、もうひとつ重要なポイントと関連している気がしてなりません。
ボールを左視野でとらえると信号は右脳に伝わり、その後、脳梁を越えて左脳に伝わるとコメントしたことがあります。論理より反射が優先する瞬間の勝負と反応のトレーニングをします。
これこそ眼と脳の基本コンビです。右脳は感覚的な行動をつかさどり、左脳は論理的思考を受け持つと言われます。
いかに右脳で投球を判断し、反射的に身体が動く反応回路を柔軟に開いて打席に立てるか、それがバッテイングの成否を分ける大切な基本です。人がものを見るとき、左右それぞれの眼の視野の真ん中から左側の光景は右脳に、真ん中から右側の光景は左脳にそれぞれ送られ認知されます。
それにしても、こんなところにもIには接点があったのです。「ボールの右側を見る」とき、視野の中心はボールの右端になるので、ボールの大半は左の視野に入ります。
つまり、I選手はボールの大半を右脳でとらえているわけです。だからこそ、I選手の身体は投球に対して反射的に反応し、芸術的とも言えるヒットを量産できるのかもしれません。
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